医療法人スマイルアート
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赤ちゃんの生えてきた歯について

Q.赤ちゃんの生えてきたばかりの歯をどのように磨くのでしょうか?

A.上下の前歯を合わせて8本ぐらい生える時期までは、歯ブラシで無理して磨かなくても大丈夫です。
この時期までは、ガーゼハンカチ等を親指と人差し指に巻きつけて優しく前歯をつまむようにして磨いてあげます。
また、歯を磨くといった意味での歯磨き粉は必要ありませんが、歯を強くするためのフッ素に関しては利用する方がいいと思います。
最初のうちは、自分で歯ブラシを持たせて、お口の中に入れる遊びから始めるといいでしょう。
ただし、この時にあまり長い歯ブラシだと喉をつついてしまう危険性があります。
そのため、赤ちゃんの喉をつつかないような、丸い形の歯ブラシなどもありますので、こういった赤ちゃん用の歯ブラシを利用することから始めましょう。
嫌がって泣き騒ぐ場合は、お母さんの指を優しくお口の中に入れる練習から始めましょう。
この場合、いきなりお口の中に入れるのではなく、
まずほっぺたを触ってあげるなどお口の周りに対する刺激を与えることから慣らしていくといいでしょう。
こうした練習ができることをふまえて、糸切り歯や奥歯が生えはじめた時には、少しずつ歯ブラシで磨く練習を始めます。
使用するフッ素は、奥歯が生えてくるまではスプレータイプのものがいいでしょう。
特に、夜間の授乳を行っている場合は、奥歯が生えてきたころから虫歯になる危険性が高まってきます。

そこで授乳後にスプレーのフッ素が出来るように用意しておくといいでしょう。
   
実際の歯ブラシ使い方は、いきなりお口を開けて奥歯から磨き始めるのではなく、噛ませて下の前歯を優しくこすることから始めます。
次に、口角(唇の端)に歯ブラシがひっかからないように、90度回転させて奥歯の方に挿入します。
この時も上下の歯は噛ませたままで、優しく小刻みに歯ブラシを動かすようにします。
上の前歯は上唇小帯(唇の裏のスジ)に歯ブラシが当たって傷つくことがあるので、上唇小帯を指で軽く押さえ、歯ブラシで上唇小帯をこすらないように気をつけましょう。
しばらく噛んだままで歯の外側を磨いていると、子供は口を開けたくなるので、そのチャンスを狙って、下の奥歯の内側を磨いてあげます。
上の奥歯の内側はほとんど汚れがつくことはありませんので、よほどお子さんの機嫌が良い時に限り磨き、無理に磨くことはありません。


特に、2歳前後までの歯磨きの時間は、お子さんの機嫌の良い時をねらって、半分遊び感覚で行うほうが歯磨きを嫌がることは少なくなるでしょう。
テレビの歯磨き番組等を模倣しながら磨かせる、磨きする真似をしてみせる、兄弟ができることをみせる、親子で向かい合って歯磨きをする、など楽しく真似したいという気持ちを抱かせることが重要です。
機嫌が悪い、眠い時は無理矢理歯磨きするのではなく、しばらくは歯ブラシでなく、ガーゼに戻ることも一つの手段です。                      

幼児反射の残っているお子さんは、お口の中に物を入れられること自体に恐怖心があります。
この場合は、まず口に触ることを慣らすためにお風呂の中で、シャワーを使って遊びます。
シャワーの湯をゆるめにして、お口の周辺にかけてあげます。
次に、シャワーの湯をお口の中にためること、そして唇を閉じて水鉄砲のように口先から吐き出して、相手にかける遊びにより、唇の緊張をほぐしていくことができます。

3歳ぐらいまで(お話しがしっかりできる年齢まで)は、決して出来ないことに怒ったり、罰を与えないでください。
上手に出来た時だけ大げさに褒めてあげるようにするといいです。
お母さんの虫歯にしたくないという思いは非常にわかりますが、歯ブラシだけで虫歯予防が完璧にできるわけではありません。
また、まだそれほど多くの甘い食品や、甘い飲み物をとっていない年齢においては、1週間程度の歯磨き不足がそのまま虫歯の原因になることはありません。
基本的には、歯を綺麗に丈夫にするために、フッ素をしたり、歯の汚れをとるのは歯医者さんの仕事です。
むしろ、普段から上手に歯磨きできているから心配ないと考えるよりは、定期的に歯医者さんでの歯磨きや、フッ素塗布を受けている方が安心だと考えてください。

歯磨きの注意点ですが、2歳ぐらいまでのお子さん、またはよちよち歩きの段階では、歩きながら歯ブラシをくわえることは避けてください。
転んだり、つまずいて喉をつつく等、数多くの事故が報告されています。
3歳の子供にお母さんの仕上げ磨きが嫌いな理由ベスト3を聞いてみました。

1位 いつも機嫌が悪い時に歯磨きされる
2位 力を入れすぎて痛い
3位 歯磨きされる時のお母さんの顔が怖い

どうですか、思い当たる節はありませんか?



Q.虫歯の成り立ち、母子感染、おっぱいと虫歯

A.砂糖は虫歯の原因と言われていますが、砂糖がそのまま虫歯を作るわけではありません。
砂糖が虫歯菌によって酸に変わり、その酸が一定時間以上歯の表面に付着していることで虫歯ができます。
この酸に負けない強い歯を作ることが大事なのですが、基本的には虫歯にならないように予防することよりも、ある程度甘い物食べて歯磨きしなくても、虫歯にならないような強い歯を育てる方向に考えを変えましょう。
そのための出発点は、まず妊娠中にお母さんのお口の中の状態を虫歯になりにくい、免疫力の高い状態に変化させておくことです。
つわりなどで歯磨きがあまりできない環境が続くと、お口の中で菌が増えてしまうためです。
この菌がお子さんに感染することで虫歯になりやすくなるため、特に感染しやすい出産直後から2歳ぐらいまでのお母さんのお口の中の状態が重要です。
出産直後から2歳までは育児が忙しく、なかなか自分のお口のケアをできませんので、ぜひ妊娠中に歯医者でお口の中の改善に努めてください。
ただし、どんなにお口の中をきれいにしても、虫歯菌が感染するのはほとんど避けられませんので、お母さんのお口をきれいにして、子供に虫歯になりにくい菌をプレゼントすると、前向きに考えてください。
今更遅いとあきらめる前に、お子さんと一緒にお母さんもぜひフッ素による予防管理をはじめてください。   
フッ素入り歯磨剤とフッ素製剤とでは明らかに違いがあります。市販されているフッ素入り歯磨剤は、歯磨きした後よくゆすぐようにと注意書きがあります。
よって、フッ素としての効果はあまり期待できません。
それに対してフッ素製剤は(当然歯医者さんでしかこれを取り扱いしていませんが)歯磨きをした後あまりゆすがないようにとの指示があります。
フッ素濃度によって味がかなり違いますので、年齢に合わせたものを利用するようおすすめしています。

1歳2カ月を区切りとして、母乳成分が変わってくるという報告があり、このくらいの時期から虫歯になる危険性が増すという報告もあります。
虫歯になりやすいといって卒乳を早めるお母さんもいますが、卒乳は母子の大切なコミュニケーションですので、お子さんの様子を十分に観察して、決してお母さんの都合だけで卒乳時期を決めるべきではないと思います。

例えば、かなり気温の低い寒い冬の時期に無理矢理卒乳しようと思っても、赤ちゃんはお母さんの体温を求めて抱きついてくることが多いでしょう。
そういった時期を少し伸ばしてあげることも必要です。
また、卒乳は離乳食の内容や量との関係も非常に問題で、母乳からとる栄養が多い時期に無理矢理やめることはできません。歯科的な虫歯の関係からいうと、前歯が4本以上生えてきて、夜間の授乳が複数回あると、虫歯になる可能性が高くなります。
しかし、先程のような理由でなかなか卒乳に持っていけない場合は、歯科医院で相談して、フッ素塗布を確実に定期的に行うことや、家庭用のフッ素スプレーを用意することで、かなりの予防効果は期待できます。

また、近年哺乳瓶によるボトルカリエスが問題になったこともありますが、フォローアップミルクや、乳酸飲料などの内容表示をよく確かめて、砂糖の入っているもの避けた方が賢明でしょう。

しっかり母乳で育てたお子さんの方が全身の免疫能が高いという報告もあります。
一般的な噂などに惑わされることなく、歯医者さんにしっかりフォローをしていただければ、虫歯の心配はあまりないということです。
逆に十分な哺乳が出来ない、早期に断乳をしてしまう、といったことに対して、警告を発する歯科医師もいます。
哺乳する際に、赤ちゃんが思うように飲んでくれない、または乳首が痛いなどの症状がお互いにある場合は、赤ちゃんの舌小帯異常が考えられます。
こういった場合、母乳保育に関心のある歯科医師や耳鼻科医などでは、赤ちゃんの舌小帯を簡単に切除することができます。
赤ちゃんの舌小帯切除は、生後6カ月以内が理想です。
最新のレーザーを使って行った場合、痛みや出血もなく、その後の感染などの心配もありませんので安心して受けることができます。


Q.虫歯になりにくい間食、離乳食

A.甘い物全てが虫歯になるわけではありません。
同じ甘い物を食べても、虫歯になりやすいお子さんもいれば、甘い物を食べ歯磨きをさほどしなくても虫歯にならないお子さんもいます。
これらが「歯の質」お口の中の虫歯に対する免疫機能ということになります。このことから考えた時、何を食べるかではなくどういう生活リズムの中で食事をしているかということが重要になってきます。

基本的に4、5歳くらいまでのお子さんは、平均1日5回食と考えられます。
朝昼晩の3回の食事に加え、午前午後のおやつ、または間のおやつと考えた間食、これが平均的な食事のリズムと言えます。
この間の食事が甘い食事の甘食と固定されてしまった場合は、問題が生じます。具体的には、定時の食事が十分な量としてとられなかった場合、それをお菓子で間に合わせるような習慣がついてしまうことです。
また、喉の渇きに対しては、常に砂糖の入った飲み物を常備しているような家庭においては、甘食はかなりの回数になると考えてください。
三つ子の魂百まで、という言葉のように、小さい頃の味覚は大人になっても引き継がれていきます。
人の味覚には、「甘い」「辛い」「苦い」「すっぱい」の4種類があります。
この中で甘い辛いは、生命維持のための炭水化物とミネラルの味を代表しています。
これに対し苦いすっぱいは、毒物または腐敗したものの味、こういった危ない物の味の代表です。
生まれたばかりの原始的な味覚は、甘い辛い味を好んで受け取ります。
逆に毒の味は、敬遠されるように自然と遺伝子がそれを決定しています。
しかし、人が母乳だけでなく、様々な味を覚え、社会の中で生活していく上で、苦いすっぱい味は必要な味覚なのです。

この甘い辛いといった基本的な味覚を鋭敏に保ち、また、3歳くらいまでのうちに、苦いすっぱい味を上手に覚えてもらうことにより、味覚の幅が広がり、野菜嫌いや、常に甘い物をほしがり虫歯になりやすい、免疫能の低下を防ぐことができるようになります。
具体的には、甘い辛い味付けを、3歳くらいまでは大人の半分くらいの味付けに薄めておくこと。
例えるならば、市販のリンゴジュースは、1歳くらいまでは3倍の量に水で薄めてあげること。
2歳くらいで30%程度の水を加える程度にし、3歳過ぎてようやく市販のリンゴジュースを普通に飲むように濃さを調整するということです。
甘い物で調整が難しい場合は、塩味を加減して味噌醤油塩味など大人の半分くらいにしてあげることにより、甘いものに対する感覚も鋭敏になると考えられます。
また、これだけでは食事の味付けが味気ない物になってしまうので、上手に苦い物やすっぱい物を、子供がおいしいと感じることが出来るように、普段から取り入れていくのが良いと思います。しかし、最初から味を薄めることが出来ないこれらの食品において、苦い物では、煮詰めた麦茶を段階的に薄めながら苦い味に慣らす、という方法が良いです。
また、すっぱい味は、プレーンのヨーグルトを使用することで慣らすことが出来ます。


Q.歯並びの育成について、指しゃぶりとの関係

A.子供の歯並びを決定していく要素は

1.舌の動き
2.口唇閉鎖
3.歯の使い方
1.舌の使い方

母乳保育がしっかりと行われ、母子ともに十分な哺乳が経験されて発育を遂げたならば、通常は舌の運動に問題を生ずることはありません。
しかし、これは非常に見逃されやすいことなので、早期に歯科医師の診察を受けた方がいいと思います。
先に述べましたように、この場合は生後6カ月以内の舌小帯の切除がかなり有効です。
もしこの時期を逃してしまったのなら、舌を積極的に上へ吸い上げ、口を大きく開け、舌小帯を伸ばすような運動が必要になります。
MFTのような複雑な運動は子供にはかなり難しいです。
そこで、広くて底の浅い皿を舌で舐めるようなしぐさ、これを時々食事の中に取り入れることによって、舌の動きはかなり改善されると考えられます。

2.口唇閉鎖
食事の際はもとより、通常の呼吸においても、口唇を閉鎖し、鼻呼吸をすることが口の中の発達において重要な機能発達となります。
しかし、最近は免疫過剰症の現れであるような、アトピーや鼻閉など鼻呼吸を困難にする要因が、子供たちだけでなく大人たちにも多くみられるようになってきました。
小学校に上がる頃になると、積極的に口唇閉鎖のための器具や、トレーニング用具を用いることが出来ますが、最も口唇閉鎖をトレーニングして効果のあると思われる3,4歳児においては、なかなか適切な用具が見当たりません。
口唇閉鎖のためのおしゃぶりを推奨する医療関係者もいますが、開咬による歯列発育の問題が取り上げられ、現在ではおしゃぶりは積極的には推奨されていません。

 3.歯の使い方
最近は軟食傾向といわれ、硬い物を食べましょうという運動も、食育の中に取り入れて試みられていますが、古代食とは違うので、現代食をよく噛むことには無理があります。あえて硬い物ばかり食べさせることは、かえって子供の反発を招きかねません。
よく噛むことのきっかけとして、食事中の水分摂取を制限しましょう、というのもあります。
お茶やお水を食事と一緒にとって流し込み食べをしないようにしようというのには一理あります。ましてや、ファミレスのお子様ランチではありませんから、ジュースで流し込んで食べるというのも、子供には勧められません。
そこで私が提案するのは、一つ一つの食品を大きめに切り、1回の食べる動作で必ず前歯で噛み切る動作を、必然的に食事の中に追加することを考慮すればよいと思います。
何も難しく考えることはなく、調理の中であまり細かく食品をきざまないという、いわば調理を手抜きすることです。
リンゴを例にとると、リンゴジュースは噛まなくても飲みこめるが、すりおろしたリンゴなら、多少は歯を使って噛むこともある。
しかし、これを8分の1にカットした場合は、1度は歯で噛む動作を行うと思います。
さらにそれが4分の1になり2分の1になった場合、前歯奥歯を使うチャンスは格段に増えてきます。
リンゴの丸かじりを行った場合はかなりたくさん歯を使うことになります。
さらに、リンゴの皮も自分の前歯を使って、むいて食べるようなことをさせれば、リンゴ一つ食べるのにかなり多く前歯を使うことになります。

また、おにぎりを子供に作ってあげる場合、しっかり三角に握った見た目も美しいおにぎりは非常に食べやすいが、形もいびつで、握り方もしっかりしていないおにぎりを子供にあげた場合、子供はそれをこぼさないように上手に手で握り、口唇と前歯を使っておにぎりを食べることを覚えます。
だから、母親は調理を手抜きすればいいのです。
これは極端な例えかもしれませんが、子供が前歯を使うという過程は、その発達過程に目と手、そして口唇、さらに前歯奥歯を上手に使い分けるように自然と仕向けて行くことにあります。現代の子供が魚嫌いというのも、丸ごと出された魚では、箸、唇、舌、歯を使って、肉と骨を口の中で上手に食べ分けなければいけない動作が、なかなかうまくできないからかもしれません。
つまり必要に迫られて使わなければ、歯も歯並びもお口の中の発達はありえないのです。
ただし、奥歯が生えてきたことと、唇の形が食品を上手に捕食できるほどに発達して形を変えたころ、子供が食に関心を示したタイミングなどを十分に考慮することが必要で、決してあせってはいけません。
3歳ぐらいまでの指しゃぶりは、それ以降に無理なくやめることが出来れば、それほど歯列に対する悪影響は残らないと言われています。
指しゃぶりは、母親を求める代償行為とも呼ばれているように、状況をよく観察し、慎重に制止しなくてはいけません。
弟や妹が生まれた場合、よく赤ちゃん返りするなどといわれることがあります。
まさにこういった場合の指しゃぶりは、慎重に対応することが必要です。
実態のつかみにくい爪噛みや、毛布噛みなどに比べれば、指しゃぶりは非常に分かりやすい分だけ、じっくり対応がしやすい。
また、乳歯列のうちは、指しゃぶり単独による歯列変形は、治癒にそれほどの努力を必要としません。
指しゃぶりをしている本人に、やんわりと指しゃぶりをやめたいかやめたくないかを問いかけ、やめたい場合にのみ、カレンダーに色塗りなどをさせ、指の機能を高めていくことにより、自然にやめていく方法や、就寝時などの無意識の指しゃぶりを制止するため、苦いマニキュアなどが道具としてある。
しかし、親による強制的な指の引き抜き、これは絶対に行ってはいけません。